それを恋とは言わないけれど

好きなものを好きなだけ

二次元オタクの女子大生が歌舞伎を好きになったきっかけ

 

 

を思い出していきたいなと思います。

 

好きになったきっかけということで、好きになる前の無知ゆえの無礼さがちょいちょい挟まっているのですが、若気の至りだと思って許してくださると嬉しいです。

 

 

歌舞伎を好きになるまでの私

(この章丸々飛ばしていただいても構いません) 

歌舞伎にハマったのは約1年半前です。2014年冬の南座顔見世興行でした。

 

その時スマホで撮った南座

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前回のエントリーにも書いたように私はオタクでして、2014年はというと黒バスの紫原敦に夢中でした。208㎝の巨体に乗っているとは思えない眠たげなベビーフェイス。脱力した話し方や振る舞い、お菓子への並々ならぬ執着と相反して「バスケは嫌い」という態度。なのに強い。全国大会で当たり前のように相手チームを0点に抑えちゃう。強い。強い故に「バスケつまんない」とか言う。本当は好きなくせに。

 

隣にいる体はクールに心は熱い美形の帰国子女との関係も含めて、それはもう夢中でした。

 

アニメ2期の最終話では誠凛の反撃と同時に流れる谷山紀章の歌声に絶望し、陽泉の敗北にTLの仲間と共に慟哭し、いつか彼らの勝利ルートが見られるんじゃないかと何十回も繰り返し再生する姿を友人に見られ、「ほむほむかよ」とのツッコミを頂いたりもしました。

 

文章にするとだいぶ気持ち悪いですね。

 

 

歌舞伎を観に行こうと思った理由

そんな風に身も心もどっぷりアツシにハマっており、まさか黒バスはおろか二次元を飛び出して三次元を追っかけるようになるなんて思いもしていなかった私が南座顔見世興行を観に行った理由は

 

なんか京都っぽいから

 

これです。

とりあえず、ごめんなさい。

 

説明しますと、私の学校は12月に行われる南座顔見世興行の3等席を、日にちや部数こそ決まってはいますが約半額で売ってくれるんですね。私はその看板の前を通りかかり、「せっかく京都の大学に来たんだし、人生で1回くらい歌舞伎観てみるか~」と軽い気持ちで観劇を決めました。しかも発売日を失念していてチケットを買ったのは次の日でした。先行から一般まで発売日を手帳に記すようになった今の私には考えられない呑気さ。

 

今の私なら発売時間の3時間前には絶対ならんでいるラインナップ……

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(歌舞伎美人より)

 

手に入れたのは夜の部のチケットでした。これも演目が貼ってある看板を眺めて「この鳥辺山心中ってやつ、心中という名前(演目という言葉も知らない)からして恋愛物だろうし、まあイケるでしょ」という何とも言えないフィーリングで決めました。夜型の人間なので「昼の部だと起きれるか分かんないし早起きつらい」というのも夜の部にした理由の一つです。一番左に書いてある爪王に対しては「変な名前だな」とさえ思ってました。ごめんなさい。

 

 

けれど結果的にこの2つの演目に人生変えられたんですよね!!!!

 

 

人生ホント何が起こるのか分からない……。あの時昼の部を選んでいたらもしかしたら今私はここにいないかもしれない……。それほど私が目の当たりにした鳥辺山心中と爪王は私の心を撃ち抜きました。具体的に言うと、七之助さんを中心に。

 

 

初めての歌舞伎 in南座

正直に懺悔申し上げますと、最初の忠臣蔵半分寝てました。初めて聞く浄瑠璃は意味が分からないし、イヤホンガイドの説明で状況は分かってもそんなに面白いことが起こっている訳でもないし……。お祭りもイヤホンガイドを聞いて「あぁあのお兄さんは今こんな動きをしているんだな」というのは分かっても面白さを感じることはありませんでした。(本当に勿体なかった)何故この演目では初心者の私は歌舞伎を面白いと感じられなかったのか、自分なりに考えをまとめてみたので、また後日記事にしたいなと思っています。 

 

ま~伝統芸能って今の”普通”の人間が観たらこんなものだよな、お金持ちや頭のいい人は楽しめるんだろうな、と思っていた私が「歌舞伎の見方」を掴めたのは鳥辺山心中です。

 

鳥辺山心中はその名の通り心中物です。開演前に期待していた(ドラマや小説でありがちな)悲惨だけれどどこか耽美な人殺しのシーンなどはありませんが、美しい満月を背景に、静かに穏やかに死に場所へと歩く2人を観て「あぁ、綺麗だな」と純粋に思いました。そして終演後は「お花ちゃん可愛かったな」とも。

 

そう、そのお花ちゃんこそ後に私の”推し”となる中村七之助丈その人です。

 

お花ちゃんの出番はほんの1シーン、しかも台詞も一言しかありません。し、私はその一言すら覚えていません。なぜなら心を奪われたのは、その台詞を放った次の仕草だったからです。偉そうな男の人に寄せていた体を離し、プイっと拗ねたように顔を背けるその一連の動作があまりにいじらしくも可憐で、その可愛らしさにショックを受けた私は、彼女をたしなめる男の人が呼んだ「お花」という名前を忘れないように必死に胸に繰り返したのを覚えています。

 

それほど衝撃的な可愛さのお花ちゃんは誰が演じているんだろう?とチラシを眺め、「ふうん七之助さんって人か」とそういえば舞台に立っているのはみんな男の人なのよね、と思い出しただけで、同じ名前が隣の爪王にも載っていることには気づきもしませんでした。それでも「なんか女の人に注目するとめちゃくちゃ綺麗で可愛いぞ……?セットも凝ってるし……。ロマンチックな話の歌舞伎って絵になるんだなあ」と自分なりに歌舞伎の楽しいポイントを見つけていました。この、自分が楽しめる見方を感覚的に掴めたことって、こと歌舞伎の鑑賞においては大事だったなと思います。

 

そして始まった爪王。これを語ろうとすると私は元々ない語彙力がレベル2にまで落ちてしまうのですが、本当……すごかったです…………。(語彙力2)

 

あらすじをざっくり説明しますと、雪山に住んでたまに人間に悪さする狐(勘九郎さん)をおじいさん(亀蔵さん)に飼われている孤高の鷹(七之助さん)が退治しにいくよ!一度負けちゃうけど、飼い主のおじいさんのためにも負けられないから深い谷底から血だらけで戻ってきたよ!だからおじいさんもう泣かないで!狐!次こそ倒すぞ!やったー!勝ったー!という、ストーリー自体は今までのどの演目よりも単純なのですが、だからこそ良かった。(語彙力)(うろ覚え)

 

当時の感情をただ書き連ねるなら

あれ鷹?!鷹めっちゃ人間じゃん!めっちゃ綺麗!!!人間なのに鳥に見える不思議!!!なにこの人めっちゃ綺麗!!うわ着物めちゃくちゃキラキラしてる高そう!!!これ羽の模様じゃん!!めっちゃ高そう!!!めっちゃ綺麗!!!着たい!!!わたしアレ今度の成人式で着たい!!!!!めっちゃ飛んでる!!!!!羽ばたいてる!!!!!!!!雪降ってる!!!!!!!!寒そう!!狐めっちゃ跳ねてる手ごわそう!!!!!頑張れがんばれ!!!!!え??いま吹雪ちゃん劣勢???!!!がんばれめっちゃがんばれ!!!!!ア…………落ちてった…………。二人の戦いに夢中でいつ開いたかもわからない舞台の穴に落ちた…………………………。

 

とここまでが前半です。いかに吹雪ちゃんの美しさに興奮していたか伝わりましたでしょうか?

左奥のぽっかりと空いた暗闇にポイ、と棄てられるように落ちていった吹雪ちゃんをたまに思い出します。戦いの途中での凛とした海老反りも、再び戦いを挑み勝利した時の気高い美しさも。そして、あぁ爪王また観たいなぁ……とため息をつくまでが1セットです。

 

後半の心情もまあ似たような調子なのですが、私はあの大量の紙吹雪が舞うあたりの記憶がありません。熱で浮かされたようにぼんやりして、もっとちゃんと見なきゃ頭よ冴えろと必死だったことばかり覚えています。

 

そして「すごいものを観てしまった……」という大きな衝撃のせいか劇場を出る足も頭もふらふらして、地に足がついていないってこういうことかな、と思いながら家に帰り、故郷のお母さんに「歌舞伎すごかった」とLINEをして、お風呂に入って床に就くも今日観た歌舞伎、主にお花ちゃんと爪王を反芻しては胸がドキドキして眠れないまま気が付いたら明け方でした。(マジで)

 

 

長くなりましたが(約3000字)、以上が私が歌舞伎にハマったきっかけです。

 

 

まとめと後日談

 まとめると、鳥辺山心中で女方の可愛さを知り、セット(大道具)や衣装の豪華さ、見えている舞台の裏にとんでもない数のお金と人がいることに気づき、爪王ではただただ七之助さんの圧倒的な美しさと徹底的に「粋」を追求する歌舞伎の精神に感動して心を撃ち抜かれた、という感じです。歌舞伎、めっちゃ面白い!全然古いものじゃない!

 

こんな4行で済むものを3000字もダラダラとすみません。

 

「もう一回歌舞伎が観たい」を口癖にしつつ、同じ演目を数回観るという発想のない当時の私やパンフレットの売り場も分からず、舞台写真にいたっては存在すら知らなかった私へ。あなたは今現在、立派に歌舞伎沼へ落ちてるよ^^

 

ちなみに次に七之助さんを観たのはシネマ歌舞伎の二人藤娘で、劇場に足を運んだのはその夏の納涼歌舞伎の京人形でした。劇場へ行くまでに半年以上とかなり時間があいていますが、そのお話もまた別の記事で書かせていただこうと思います。

 

 

 

ここまで長々とお読みくださった方(もしいらっしゃいましたら)本当にありがとうございます!好きです!!!!!

 

 

P.S.

当時の舞台写真やパンフレットなどを所持していないため、吹雪ちゃんの写真が載っている和楽11月号は私の宝物です。